J-REIT市況月次レポート 2017年3月

1.REIT全体市況

3月末の東証REIT指数(配当なし)は1,776.33ポイントと、前月比-2.26%の下落。
月初は、円安を追い風に昨年来高値を更新したTOPIXとは対照的に、米国の利上げ観測に伴う長期金利の上昇圧力を背景に、前月末の下落を引き継いで下落相場で始まった。中旬に米国の利上げペースが鈍化するとの見通しを受け、一時反発したが、月後半はトランプ政策への懸念からリスク回避姿勢が強まるなか、長期金利が低下する場面でも、株式相場全体に追随して下落。特に年度末の権利確定後3日下落に伴い、月末は1,776.33ポイントと4か月ぶり安値を付けて終了した。
中期的にみると、2017年に入り月間ベースで3か月連続の下落となった。地政学リスクも急浮上し、世界的なリスク回避姿勢から、一時的に軟調な局面も想定される。しかし長期金利が低下するなか、REITの分配金利回りが下支えとなり、資金流入の可能性も期待したい。
一方、リスク回避の動きから円高が進行すると、企業業績の悪化が懸念され、オフィスの需要悪化にも影響する。当面は、長期金利と円高の両側面のバランスによる価格形成が想定されよう。
3月における日銀の買入額は120億円。買入額は前月より倍増するも、下落相場の中でサプライズ要素はなく、REIT相場における影響力が乏しくなっている。
用途別の投資口価格推移をみると、前月と同様に、レジデンス系銘柄が比較的底堅い一方、オフィスビルや商業・物流施設系銘柄の下落率が大きい。軟調な相場環境で、レジデンス系銘柄のディフェンシブ性が際立つ。

REIT全体の運用資産を見ると、物流施設の投資額が初めて2兆円に達した。物流施設系銘柄が本格的に増加した2012年末から僅か4年間で5倍超の規模に急成長し、オフィスビル、住居、商業施設とともに、REITを構成する主要な用途として地位を築いた。GMSの衰退とともに郊外型商業施設の売却が相次ぐ動きとは対照的であり、この数年の経済活動がもたらした産物と言えよう。
但し、2017年及び2018年に掛けて、首都圏や関西圏にて過去最大規模の供給が予定されており、既に首都圏では圏央道等一部のエリアで稼働率の低下や賃料水準の変調が出ている。物流施設マーケットの成長過程において初めて訪れる懸念材料に対し、今後も順調に需要が続くかが試されよう。

個別銘柄の動向では、大和ハウスリート投資法人、スターアジア不動産投資法人、グローバル・ワン不動産投資法人、ケネディクス商業リート投資法人の4銘柄が公募増資を発表した。これで2017年に入り1銘柄が上場、2016年までに上場した57銘柄うち13銘柄が公募増資を行った。投資口市況に先行き不透明感が深まる中でも、増資を行い、早期に外部成長を進める姿勢が見られる。
大和ハウスリート投資法人は、3年半ぶりに増資を発表、調達額464億円の大型増資となった。これに伴い物流施設を中心に取得し、ポートフォリオの物流施設の投資割合が45%とレジデンスの割合と同規模となる。合併により資産規模5,000億円となったことで、大規模な増資でも吸収することができ、また合併に伴う内部留保が分配金の安定に寄与する。
このように資産規模の大きい銘柄や合併による内部留保を持つ銘柄においては、増資規模や増資時期に関係なく、比較的自由度の高い運用が可能となる。REITの大型化によるメリットが強調されることにより、更に用途の多様化やREITの合併も進むことが予想される。


<市況データ>

 

2017年3月末現在

(前月末比)

東証REIT指数(配当なし)

1,776.33

-41.03

東証REIT指数(配当込み)

3,307.66

-68.80

時価総額合計

11兆9,063億円

-1,510億円

平均分配金利回り(時価総額による加重平均)

3.76%

+0.11

 


<東証
REIT指数と予想分配金利回りの推移>  (グラフは2015年4月~2017年3月の24ヶ月間) 




2.個別銘柄データ

2017年3月末現在
証券
コード
投資法人名 投資口価格
(円)
騰落率
(1ヶ月)
予想分配金
利回り
時価総額
(百万円)
時価総額
シェア
8951 日本ビルファンド投資法人 609,000 -3.03% 2.97% 859,908 7.22%
8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 590,000 -4.68% 2.90% 772,493 6.49%
8953 日本リテールファンド投資法人 218,400 -3.36% 3.93% 582,516 4.89%
8954 オリックス不動産投資法人 176,400 -0.28% 3.42% 472,752 3.97%
8955 日本プライムリアルティ投資法人 431,000 -3.36% 3.33% 397,813 3.34%
8956 プレミア投資法人 125,900 -2.33% 3.89% 165,810 1.39%
8957 東急リアル・エステート投資法人 140,000 -1.62% 3.79% 136,864 1.15%
8958 グローバル・ワン不動産投資法人 393,000 -5.64% 3.73% 76,163 0.64%
8960 ユナイテッド・アーバン投資法人 171,000 -2.06% 3.70% 522,420 4.39%
8961 森トラスト総合リート投資法人 172,200 -6.46% 4.18% 227,304 1.91%
8963 インヴィンシブル投資法人 44,800 -7.15% 6.07% 172,965 1.45%
8964 フロンティア不動産投資法人 506,000 -1.17% 3.87% 250,976 2.11%
8966 平和不動産リート投資法人 83,700 -3.01% 4.73% 84,943 0.71%
8967 日本ロジスティクスファンド投資法人 239,600 -1.16% 3.51% 210,848 1.77%
8968 福岡リート投資法人 182,500 3.05% 3.62% 136,328 1.14%
8972 ケネディクス・オフィス投資法人 656,000 -1.80% 3.51% 265,605 2.23%
8973 積水ハウス・SI レジデンシャル投資法人 123,400 -2.06% 3.53% 136,420 1.15%
8975 いちごオフィスリート投資法人 70,000 -6.79% 5.47% 107,260 0.90%
8976 大和証券オフィス投資法人 569,000 -4.37% 3.76% 283,287 2.38%
8977 阪急リート投資法人 150,500 -2.84% 3.61% 89,924 0.76%
8979 スターツプロシード投資法人 149,300 -2.42% 5.59% 38,337 0.32%
8984 大和ハウスリート投資法人 289,400 -0.89% 3.40% 485,034 4.07%
8985 ジャパン・ホテル・リート投資法人 76,900 -4.59% 4.60% 289,291 2.43%
8986 日本賃貸住宅投資法人 81,700 -2.16% 4.48% 133,993 1.13%
8987 ジャパンエクセレント投資法人 136,700 -6.18% 3.84% 178,489 1.50%
3226 日本アコモデーションファンド投資法人 483,500 -0.62% 3.41% 234,266 1.97%
3227 MCUBS MidCity投資法人 336,500 -1.03% 4.73% 99,814 0.84%
3234 森ヒルズリート投資法人 149,200 -3.31% 3.51% 261,195 2.19%
3249 産業ファンド投資法人 501,000 -4.57% 4.00% 198,979 1.67%
3269 アドバンス・レジデンス投資法人 304,500 0.33% 3.32% 411,075 3.45%
3278 ケネディクス・レジデンシャル投資法人 313,000 -0.63% 4.13% 109,265 0.92%
3279 アクティビア・プロパティーズ投資法人 531,000 -4.32% 3.44% 353,229 2.97%
3281 GLP投資法人 128,700 0.23% 3.80% 367,191 3.08%
3282 コンフォリア・レジデンシャル投資法人 252,900 -3.03% 3.65% 142,558 1.20%
3283 日本プロロジスリート投資法人 241,300 -0.08% 3.45% 460,002 3.86%
3287 星野リゾート・リート投資法人 587,000 -1.68% 3.95% 95,983 0.81%
3290 SIA不動産投資法人 182,700 -5.53% 6.01% 34,585 0.29%
3292 イオンリート投資法人 123,600 -0.64% 4.75% 202,199 1.70%
3295 ヒューリックリート投資法人 184,600 -0.70% 3.41% 192,907 1.62%
3296 日本リート投資法人 289,000 -0.86% 5.54% 113,219 0.95%
3298 インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 99,600 -4.05% 7.07% 81,228 0.68%
3308 日本ヘルスケア投資法人 172,900 -0.86% 4.74% 12,904 0.11%
3451 トーセイ・リート投資法人 107,200 -2.28% 6.13% 19,639 0.16%
3309 積水ハウス・リート投資法人 147,600 -3.53% 3.54% 131,954 1.11%
3453 ケネディクス商業リート投資法人 250,000 -5.98% 4.75% 105,613 0.89%
3455 ヘルスケア&メディカル投資法人 99,800 -0.20% 5.16% 19,272 0.16%
3459 サムティ・レジデンシャル投資法人 82,300 -1.44% 6.38% 23,291 0.20%
3460 ジャパン・シニアリビング投資法人 138,100 -1.57% 5.07% 11,704 0.10%
3462 野村不動産マスターファンド投資法人 172,800 2.67% 3.36% 722,845 6.07%
3463 いちごホテルリート投資法人 113,400 -7.65% 5.38% 29,210 0.25%
3466 ラサールロジポート投資法人 103,100 -3.37% 4.53% 113,410 0.95%
3468 スターアジア不動産投資法人 96,900 1.47% 8.65% 33,401 0.28%
3470 マリモ地方創生リート投資法人 90,000 -1.53% 7.13% 8,187 0.07%
3471 三井不動産ロジスティクスパーク投資法人 329,000 -1.05% 3.16% 73,696 0.62%
3472 大江戸温泉リート投資法人 88,900 -1.66% 5.47% 15,664 0.13%
3473 さくら総合リート投資法人 77,700 -5.01% 7.37% 25,874 0.22%
3476 投資法人みらい 162,300 -4.19% 5.81% 47,676 0.40%
3478 森トラスト・ホテルリート投資法人 153,200 4.08% 3.93% 76,600 0.64%


予想利回り算出方法:年換算予想分配金(当期予想分配金+次期予想分配金)/投資口価格

但し、 決算期が年1回の銘柄: 年換算予想分配金(当期予想分配金)/投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する 

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する 

※利益超過分配金は分配金に含めて算出する

 

バックナンバー

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決算発表動画
物件取得価格ランキング
1 新宿三井ビルディング 1,700億円
2 飯田橋グラン・ブルーム 1,389億円
3 六本木ヒルズ森タワー 1,154億円
4 汐留ビルディング 1,069億円
5 東京汐留ビルディング 825億円
株価値上り率ランキング
1 インヴィンシブル +1.90%
2 オリックス不動産 +1.45%
3 マリモ +0.92%
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