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2008.10.17
投資口価格の下落とREITのシステム/REITアナリスト 山崎成人


 先週のニューシティレジデンス投資法人の破綻によって、REIT市場での投資口価格は更に下落しています。
その結果、予想配当利回りが48%に達している銘柄や30%台の銘柄もいくつもあります。
配当商品がこれだけの利回りになるのは前代未聞であり、最早配当利回りは投資判断の根拠には使えなくなっています。
何故このような状態に陥ったのかは、REITの不倒神話が崩壊した為ですが、冷静に考えると、理屈に合いません。

REITの投資口価格の根拠の一つとして、1口当り純資産価額((総資産−負債)/発行済投資口数)がありますが、この1口当りの価額は決算毎に発表されています。
この価額は銘柄によって差がありますが、40万円/口〜70万円/口程度の間に分布しています。
REITの資産は大半は保有不動産で、企業等の総資産に比べると中身はシンプルで外部からも時価評価し易い構造になっています。
更に、REITの保有不動産はB/S上は簿価(取得価額−累計建物減価償却費)で計上されていますから、取得価格よりも年々低くなっています。
従って単純化して考えると、REITの純資産価額とは、保有不動産を簿価で計算しそこから負債を引いて、投資家に帰属する価値を表しているとも言えます。
もっと簡単に言うと、保有不動産の価額に占める投資家持分です。
この持分が40万円/口〜70万円/口という意味ですが、この元になっている不動産価格は簿価ですので、当然取得価格よりも実勢価格も低く見積もられていると考えられます。
勿論、不動産価格が下落する局面では、簿価>実勢価格にもなりますが、それは程度の問題です。

この前提で投資口価格を見ると、10万円/口前後まで下がった銘柄は、保有不動産の実勢価値が簿価の40%〜70%程度(LTVが30%〜60%の場合)しかないと計算されている事になります。
この率は分譲マンションの在庫を買い取る買取価格に近似になっていますが、在庫化した分譲マンションは不稼動不動産であり、且つ、公租公課等の費用負担のみが生じるマイナス収益の不動産です。
一方、REITの保有不動産は売上総利益(賃貸収入−賃貸原価)が約60%もある稼動不動産です。
従って、収益ゼロ又はマイナスの在庫マンションの買取価格をREITの保有不動産に当てはめてしまうと、理論上はもっと低い価値になっていますから、見方によってはエクイティ市場は純資産価額の下落率と同じく実勢価値は25%程度と看做したと言えなくはありません。

これを冷静に考えると、エクイティ市場の見方は大変な事を言っているのです。
REITの保有する不動産は相対的に質の高い不動産ですから、この価値が25%程度しかないとすれば、日本の不動産全体では不動産価値が20%程度しかないと言っている事になります。
これはバブル崩壊時のレベルを遥かに凌ぎます。
更に悪いのは、REITの投資家というのは、その仕組みから見れば保有不動産の(実質的)所有者ですから、所有者が価値は25%と宣言している事になります。
所有者が25%と言っているのに、金融機関がそれは違うと言って融資する事は理屈に合いませんから、当然金融機関は融資を絞ります。
これが今のREITの状態です。
確かに不動産価格の実勢価格は簡単には把握出来ませんが、どのような視点から見ても25%という事はあり得ません。
しかし、エクイティ市場がそれを大合唱していて、日本の不動産が崩壊すると杞憂しているのです。(杞憂とは空が落ちてくる事を何時も心配していた人の故事です)

世界金融不安の震源地である米国REITをDOW JONES EQUITY REIT INDEX で見ると、10月15日の指数は今年1月から34%程度の下落ですが、同期間の東証REIT指数は50%下落しています。
また、米国REIT市場は日本のREIT市場のように純資産価値の25%という無法な価値を主張していません。
不動産とマネーの過剰流動性の果てに不動産価格を高騰させてしまった米国ですら、冷静に見ているのですが、日本は不動産価格が米国に比較して穏やかな上昇で終わったにも拘わらず、無法な価格を押し付けられているのです。
これでは流石のREITのシステムでも持ち応えられませんし、日本の不動産ビジネス全てが崩壊してしまいます。
「市場は往々にしてミスを犯す」と言われていますが、今はまさにその状況です。
但し、理屈はどうであっても、今は危機の入り口に立っていますから、この危機を回避する動きが必要です。
政策当局も政治も、今のところ何の動きもありませんが、これでは不作為の罪が問われます。
税金だけ取っておいて、皆さんの保有不動産の価値は25%になってしまいましたでは到底納得出来ません。
果たして、皆さんはどう思うのでしょうか。
 

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